副業禁止は違法?法律と就業規則の関係・バレたらどうなるかを解説【2026年9月】

副業マインド・キャリア

民間企業で働く人の「副業禁止」は、法律が副業そのものを禁じているわけではなく、勤務先の就業規則という社内ルールの問題です。一方で、国家公務員・地方公務員については、法律そのものに営利企業への従事等を制限する規定が置かれています。この違いを混ぜて理解していると、「副業禁止は違法だ」「副業をしたら法律違反になる」という両極端の誤解に陥ります。

そして国の方針は、すでに「原則、認める方向」に寄っています。厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は、裁判例を踏まえれば、原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当であると明記しています。ただしこれは指針であって、就業規則の私法上の効力や懲戒処分が有効かどうかは、個別の事実関係で判断される領域です。

この記事は「違法/合法」を言い切るためのものではなく、①公的な一次情報が実際に何と書いているかを確認し、②自分の就業規則を読み、③届出・許可という正攻法の手順を踏むための判断材料を揃えることを目的としています。

この記事の一次情報の確認日:2026年9月24日

厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(平成30年1月策定/令和2年9月改定/令和4年7月改定)および「モデル就業規則(令和7年12月)」、日本国憲法・労働基準法・労働契約法・国家公務員法・地方公務員法の条文(e-Gov法令検索)を確認しています。就業規則の解釈や処分の可否は個別判断となるため、実際の対応は勤務先の人事部門、労働問題を扱う弁護士、労働基準監督署などにご相談ください。

  1. 副業禁止は法律違反なのか|法律には「副業を禁止する規定」はない
    1. 憲法22条の「職業選択の自由」は、国と個人の関係を定めたもの
    2. 労働基準法などに「労働者の副業を禁止する」条文はない
    3. 公務員は、法律そのものに制限規定がある
  2. 厚生労働省ガイドラインの立場|「原則、認める方向」と制限できる4類型
    1. ガイドラインの位置づけと改定の経緯
    2. 裁判例を踏まえて制限が許されるとされる4類型
    3. ガイドラインが挙げる4つの付随義務
  3. モデル就業規則はどう変わったか|「許可なく従事しない」から第70条へ
    1. かつては「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」だった
    2. 現行モデル就業規則(令和7年12月)第70条の条文
    3. 「許可制」ではなく「届出制」が基本形になっている
  4. 会社にバレたらどうなるか|懲戒の考え方と裁判例の類型
    1. 懲戒処分は「就業規則の定め」が前提になる
    2. ガイドラインは「形式的な抵触」だけでは足りないとする裁判例の考え方を示している
    3. 厚生労働省が掲載している副業・兼業に関する裁判例
    4. そもそも「バレる」経路は制度として説明できる
  5. 就業規則の確認と届出・許可申請の実務
    1. 就業規則は「周知されているはず」のもの
    2. 副業条項を読むときの5つのチェックポイント
    3. 届出・申請のときに会社が確認する事項
    4. 相談・自己申告を理由とした不利益な取扱いはできない
  6. 副業を始める前のチェックリスト
  7. リスクを抑えて始めるための選択肢
    1. まず、詐欺的な案件を避けることがリスク管理の前提
    2. 契約関係と業務内容が明確な案件を選ぶ
  8. よくある質問
    1. 就業規則に副業禁止と書いてあります。副業をしたら法律違反になりますか?
    2. 厚生労働省が「原則容認」と言っているなら、会社の禁止規定は無効ですか?
    3. 会社が副業を制限できるのはどんな場合ですか?
    4. 副業が会社にバレたら必ず懲戒処分になりますか?
    5. 公務員でも副業はできますか?
    6. 本業と同じ業種で副業をするのは避けるべきですか?
    7. 業務委託やフリーランスなら就業規則の「副業」に当たりませんか?
    8. 副業の許可を申請したら人事評価で不利になりませんか?
  9. まとめ

副業禁止は法律違反なのか|法律には「副業を禁止する規定」はない

最初に整理すべきなのは、「副業禁止」という言葉が指しているものが法律なのか、社内ルールなのかという点です。ここを分けると、話は一気に見通しが良くなります。

憲法22条の「職業選択の自由」は、国と個人の関係を定めたもの

日本国憲法第22条第1項は「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」と定めています(e-Gov法令検索「日本国憲法」/2026年9月24日確認)。

「副業禁止は違法では?」という疑問の根拠として最もよく挙げられるのがこの条文です。ただし憲法は基本的に国家と国民の関係を規律する規範であり、会社と従業員という私人間の契約関係にそのまま適用されるものではない、というのが一般的な理解です。会社が就業規則で副業を制限することは、憲法違反かどうかではなく、労働契約・就業規則の問題として評価されることになります。

労働基準法などに「労働者の副業を禁止する」条文はない

労働基準法には、労働者が勤務時間外に他の仕事をすることを禁じる条文はありません。労働基準法が副業に関連して定めているのは、たとえば第38条第1項の「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」という労働時間の通算ルールです(e-Gov法令検索「労働基準法」/2026年9月24日確認)。厚生労働省のガイドラインは、この「事業場を異にする場合」には事業主を異にする場合も含まれる(昭和23年5月14日付け基発第769号)としています。

つまり法律が扱っているのは「副業をしてよいか」ではなく、「複数の職場で働いたときに労働時間や健康管理をどう扱うか」です。禁止規定ではなく、管理ルールなのです。

では会社が就業規則で副業を制限することは違法かというと、そうとも言い切れません。就業規則は労働基準法第89条に基づき常時10人以上の労働者を使用する使用者が作成・届出するもので、その内容が労働契約の中身として効力を持ちます。制限規定を置くこと自体が直ちに違法になるわけではなく、その規定が個別のケースにどこまで及ぶかは事実関係に即して判断される——これが実態に近い理解です。

公務員は、法律そのものに制限規定がある

民間と明確に異なるのが公務員です。こちらは社内ルールではなく法律に規定があります。

区分 根拠条文 条文が定めている内容
国家公務員 国家公務員法第103条(私企業からの隔離) 営利企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員・顧問・評議員の職を兼ね、または自ら営利企業を営んではならない(人事院規則の定めにより所轄庁の長の申出で人事院の承認を得た場合を除く)
国家公務員 国家公務員法第104条(他の事業又は事務の関与制限) 報酬を得て営利企業以外の事業の団体の役員等を兼ね、その他いかなる事業に従事し、事務を行うにも、内閣総理大臣およびその職員の所轄庁の長の許可を要する
地方公務員 地方公務員法第38条(営利企業への従事等の制限) 任命権者の許可を受けなければ、営利企業を営む会社等の役員等を兼ね、自ら営利企業を営み、または報酬を得ていかなる事業・事務にも従事してはならない(一定の非常勤職員を除く)

(出典:e-Gov法令検索「国家公務員法」/同「地方公務員法」、いずれも2026年9月24日確認)

重要なのは、これらの条文が「全面禁止」ではなく「承認・許可を要する」という構造になっている点です。地方公務員法第38条第2項は、人事委員会が任命権者の許可の基準を人事委員会規則で定めることができるとしています。運用は所属先・自治体ごとに異なるため、公務員の方はまず所属先の人事担当部署と適用される規則を確認するのが出発点です。

厚生労働省ガイドラインの立場|「原則、認める方向」と制限できる4類型

民間企業側の判断のよりどころとして、国が公表しているのが「副業・兼業の促進に関するガイドライン」です。

ガイドラインの位置づけと改定の経緯

このガイドラインは平成30年1月に策定され、令和2年9月と令和4年7月に改定されています(厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」/2026年9月24日確認、以下同じ)。冒頭には「本ガイドラインは、副業・兼業を希望する者が年々増加傾向にある中、安心して副業・兼業に取り組むことができるよう、副業・兼業の場合における労働時間管理や健康管理等について示したものである。」と目的が書かれています。

誤解されやすい点ですが、ガイドラインは企業に容認を義務づける法令ではありません。行政が示した指針であり、「これに反しているから違法」と直ちに言えるものではない、という前提で読む必要があります。

裁判例を踏まえて制限が許されるとされる4類型

ガイドラインの核心部分が、この4類型です。「1 副業・兼業の現状」では次のように整理されています。

副業・兼業に関する裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であり、各企業においてそれを制限することが許されるのは、例えば、
① 労務提供上の支障がある場合
② 業務上の秘密が漏洩する場合
③ 競業により自社の利益が害される場合
④ 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合
に該当する場合と解されている。

そして「3 企業の対応(1)基本的な考え方」の冒頭は、こう始まります。

裁判例を踏まえれば、原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当である。副業・兼業を禁止、一律許可制にしている企業は、副業・兼業が自社での業務に支障をもたらすものかどうかを今一度精査したうえで、そのような事情がなければ、労働時間以外の時間については、労働者の希望に応じて、原則、副業・兼業を認める方向で検討することが求められる。

「禁止」だけでなく「一律許可制」も精査の対象に挙げられている点は、就業規則を読むときの視点として覚えておくと役に立ちます。

ガイドラインが挙げる4つの付随義務

ガイドラインは、労働契約法第3条第4項の信義誠実の原則を引きながら、副業・兼業の場面で留意すべき付随義務として次の4つを挙げています(e-Gov法令検索「労働契約法」/2026年9月24日確認)。

  • 安全配慮義務(労働契約法第5条):副業・兼業を行う労働者を使用するすべての使用者が負う。業務量・時間が過重であることを把握しながら何らの配慮をしないまま健康に支障が生じた場合などが問題になり得る
  • 秘密保持義務:労働者は使用者の業務上の秘密を守る義務を負う。就業規則等で、秘密が漏洩する場合に副業・兼業を禁止または制限できるとしておくことが考えられるとされる
  • 競業避止義務:在職中、使用者と競合する業務を行わない義務。ただしガイドラインは「使用者の正当な利益を不当に侵害してはならないことを内容とする義務」であり、正当な利益が侵害されない場合には、同一の業種・職種であっても副業・兼業を認めるべき場合も考えられるとしている
  • 誠実義務:秘密保持・競業避止に加え、使用者の名誉・信用を毀損しないなど誠実に行動することが要請される

競業避止義務について「同業だから即アウト」ではないと明記されている点は、本業の知識や経験を活かした副業を考えている人にとって実務的に重要です。ただしこれは指針上の考え方であり、自分のケースが該当するかは勤務先との確認が必要になります。

モデル就業規則はどう変わったか|「許可なく従事しない」から第70条へ

ガイドラインと並んで参照される一次情報が、厚生労働省の「モデル就業規則」です。各社が就業規則をつくるときのひな型として公開されているもので、ここでの記述の変化が「原則禁止から原則容認へ」という潮流の実体にあたります。

かつては「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」だった

ガイドラインの初期版(平成30年1月策定時の資料)には、「副業・兼業自体への法的な規制はないが、厚生労働省が平成29年12月時点で示しているモデル就業規則では、労働者の遵守事項に、『許可なく他の会社等の業務に従事しないこと』という規定がある」という現状認識が記載されていました。

現行ガイドラインでは「厚生労働省が平成30年1月に改定したモデル就業規則においても、『労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。』とされている」という記述に変わっています。遵守事項としての禁止規定から、独立した容認規定へ、という転換です。

現行モデル就業規則(令和7年12月)第70条の条文

最新のモデル就業規則は令和7年12月版で、第14章に副業・兼業の規程例が置かれています(厚生労働省「モデル就業規則について」/全体版PDF、2026年9月24日確認)。

(副業・兼業)第70条
労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。

2 会社は、労働者からの前項の業務に従事する旨の届出に基づき、当該労働者が当該業務に従事することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、これを禁止又は制限することができる。
① 労務提供上の支障がある場合
② 企業秘密が漏洩する場合
③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④ 競業により、企業の利益を害する場合

「許可制」ではなく「届出制」が基本形になっている

条文を細かく読むと、第2項は「労働者からの届出に基づき」会社が禁止・制限できる、という構造になっています。原則は副業ができることで、届出を通じて会社が内容を把握し、4類型に当たる場合に限って制限する——という設計です。

ガイドラインも同じ方向で、「使用者は、副業・兼業に伴う労務管理を適切に行うため、届出制など副業・兼業の有無・内容を確認するための仕組みを設けておくことが望ましい」と記述しています。さらにモデル就業規則の解説では、4類型について「就業規則の規定を拡大解釈して、必要以上に労働者の副業・兼業を制限することのないよう、適切な運用を心がけていただくことが肝要です」と使用者側に注意が促されています。

ただし、これはあくまで国が示す「ひな型」です。実際に自分に適用されるのは勤務先の就業規則であり、許可制を採用している会社も現実には多くあります。モデル就業規則がこうだから自社もそうだ、という読み替えはできません。

会社にバレたらどうなるか|懲戒の考え方と裁判例の類型

結論から言えば「バレたらどうなるか」は就業規則の定めと個別の事情によって変わり、一律の答えはありません。その前提で、公的資料から読み取れる考え方を整理します。

懲戒処分は「就業規則の定め」が前提になる

懲戒処分は、就業規則に懲戒事由と処分の種類が定められていて初めて可能になるのが一般的な考え方です。まず確認すべきは自社の就業規則に副業条項があるか、それが懲戒事由として紐づけられているかです。条項がまったくない会社であれば、副業を理由とした処分の根拠自体が乏しいことになります。

ガイドラインは「形式的な抵触」だけでは足りないとする裁判例の考え方を示している

ガイドライン「3(1)オ(イ)」には、次の記述があります。

なお、副業・兼業に関する裁判例においては、就業規則において労働者が副業・兼業を行う際に許可等の手続を求め、これへの違反を懲戒事由としている場合において、形式的に就業規則の規定に抵触したとしても、職場秩序に影響せず、使用者に対する労務提供に支障を生ぜしめない程度・態様のものは、禁止違反に当たらないとし、懲戒処分を認めていない。
このため、労働者の副業・兼業が形式的に就業規則の規定に抵触する場合であっても、懲戒処分を行うか否かについては、職場秩序に影響が及んだか否か等の実質的な要素を考慮した上で、あくまでも慎重に判断することが考えられる。

読み替えると、「無許可でやった」という形式だけでなく、職場秩序や労務提供に実際に支障が生じたかという実質が見られるということです。これは労働者側にとっての安心材料であると同時に、「本業に支障が出る働き方をすれば実質が問われる」という警告でもあります。

厚生労働省が掲載している副業・兼業に関する裁判例

モデル就業規則の第70条の解説には、副業・兼業に関する裁判例が出典付きで掲載されています。判断が分かれている点が重要なので、そのまま紹介します(同PDF/2026年9月24日確認)。

事件名・裁判所・年月日 厚生労働省による事案の要旨
マンナ運輸事件
(京都地判 平成24年7月13日)
運送会社が準社員からのアルバイト許可申請を4度にわたって不許可にしたことについて、後2回については不許可の理由はなく、不法行為に基づく損害賠償請求が一部認容(慰謝料のみ)された事案
東京都私立大学教授事件
(東京地判 平成20年12月5日)
教授が無許可で語学学校講師などの業務に従事し講義を休講したことを理由に行われた懲戒解雇について、副業は夜間や休日に行われており本業への支障は認められず、解雇無効とした事案
十和田運輸事件
(東京地判 平成13年6月5日)
運送会社の運転手が年に1、2回の貨物運送のアルバイトをしたことを理由とする解雇に関して、職務専念義務の違反や信頼関係を破壊したとまではいえないため、解雇無効とした事案
小川建設事件
(東京地決 昭和57年11月19日)
毎日6時間にわたるキャバレーでの無断就労を理由とする解雇について、兼業は深夜に及ぶもので余暇利用のアルバイトの域を超え、社会通念上、会社への労務の誠実な提供に何らかの支障を来す蓋然性が高いことから、解雇有効とした事案
橋元運輸事件
(名古屋地判 昭和47年4月28日)
会社の管理職にある従業員が、直接経営には関与していないものの競業他社の取締役に就任したことは懲戒解雇事由に該当するため、解雇有効とした事案
都タクシー事件
(広島地決 昭和59年12月18日)
隔日勤務のタクシー運転手が非番日に無断で輸出車の移送・船積み等のアルバイトを行った事例で、乗務前の休養が要請されること等の事情から「就業規則により禁止された兼業に該当する」とされた事案

読み取れる傾向ははっきりしています。解雇が無効とされた事案は「本業への支障が認められない」ケース、有効とされた事案は「長時間・深夜に及ぶ」「競業他社の役員に就任した」など、4類型に実質的に該当するケースです。裁判所の判断はいずれも個別の事実関係に基づくもので自分のケースに直接当てはめられるものではありませんが、分かれ目の見取り図にはなります。

そもそも「バレる」経路は制度として説明できる

副業が勤務先に伝わる経路は、噂話のようなものだけではありません。住民税の特別徴収や社会保険の届出といった、制度上そうなる経路があります。ここを理解しておくと、隠すか隠さないかという二択ではなく手続きを正しく整えるという第三の選択肢が見えてきます。経路ごとの仕組みは「副業が会社にバレる仕組みと対策|住民税・社会保険の経路と正しい手続き」で解説しています。

とくに住民税については、「所得が20万円以下なら何もしなくてよい」という理解が広く流通していますが、これは所得税の話であり住民税には同じ省略規定がありません。この点は「副業20万円以下でも住民税は申告必要」で扱っています。ガイドラインも「副業・兼業を行い、20万円を超える副収入がある場合は、企業による年末調整ではなく、個人による確定申告が必要である」と記載しており、確定申告と住民税申告は別の話だという前提を押さえておく必要があります。

就業規則の確認と届出・許可申請の実務

ここまでの内容を自分の状況に落とし込む作業が、就業規則の確認です。正攻法はここから始まります。

就業規則は「周知されているはず」のもの

労働基準法第106条は、使用者が就業規則を労働者に周知させなければならないと定めています。社内ポータル、共有サーバー、総務部での備え付けなど形はさまざまですが、「見せてもらえない」状態は本来想定されていません。見当たらなければ、人事・総務に「就業規則を確認したい」と伝えるところから始めます。

副業条項を読むときの5つのチェックポイント

  1. 条項そのものが存在するか:副業・兼業に関する規定がない会社もあります
  2. 「禁止」か「許可制」か「届出制」か:文言で対応がまったく変わります。モデル就業規則は届出制を基本形にしています
  3. 禁止・制限の要件が書かれているか:4類型に相当する要件が列挙されているか、それとも要件なしの一律禁止か
  4. 対象範囲はどこまでか:「他の会社等の業務」なのか、雇用以外の業務委託・自営も含むのか。モデル就業規則の解説は、副業・兼業には「事業主となって行うものや、請負・委託・準委任契約により行うもの」も含まれるとしています
  5. 懲戒事由と紐づいているか:懲戒規定の条文に副業条項が引用されているかを確認します

届出・申請のときに会社が確認する事項

ガイドラインは、使用者が労働者から確認する事項として他の使用者の事業場の事業内容/その事業場で労働者が従事する業務内容/労働時間通算の対象となるか否かの確認を挙げています。申請時に聞かれる可能性が高い項目なので、整理しておくと話が早く進みます。労働時間の通算が必要になる場合は、所定労働時間や始業・終業時刻などの追加確認も想定されます。

なお、雇用されない形(業務委託や自営)について、ガイドラインは労働基準法が適用されない例として「フリーランス、独立、起業、共同経営、アドバイザー、コンサルタント、顧問、理事、監事等」を挙げ、この場合は労働時間の通算の対象外としています。ただし就業規則上の「副業」の定義には含まれ得るため、通算の対象外であることと届出が不要であることは別問題です。契約形態による違いは「副業と個人事業主の違い」もあわせて確認してください。

相談・自己申告を理由とした不利益な取扱いはできない

申請をためらう最大の理由は「言ったことで評価が下がるのではないか」という懸念でしょう。この点についてガイドラインは「副業・兼業に係る相談、自己申告等を行ったことにより不利益な取扱いをすることはできない」と明記しており、モデル就業規則第70条の解説にも同趣旨の記述があります。受け止め方は会社によって差がありますが、就業規則が許可制・届出制であるなら、申請して記録を残すほうが、後から発覚する形より説明可能な状態を保てるのは確かです。

副業を始める前のチェックリスト

ここまでの一次情報を、着手前に確認する順番に並べ直します。

  1. 自分は公務員か民間かを確認する(公務員は国家公務員法103・104条、地方公務員法38条と所属先の規則が先に来る)
  2. 就業規則の副業条項を実際に読む(禁止/許可制/届出制/規定なしのどれか)
  3. 禁止・制限の要件が4類型に相当する形で書かれているかを確認する
  4. 予定している副業が4類型に触れないかを自己点検する(本業に支障が出る時間帯・分量か、競合他社の業務でないか、本業の情報を使わないか)
  5. 契約形態を決める(雇用か業務委託か。労働時間通算の要否が変わる)
  6. 届出・許可申請があるなら、事業内容・業務内容・労働時間を整理して申請する
  7. 収入が出た後の申告の段取りを先に把握する(確定申告と住民税申告は別。会計ソフトは「やよいとマネーフォワードの比較」を参照)
  8. 判断に迷う点は、勤務先の人事・労働基準監督署・弁護士など個別判断ができる相手に確認する

副業そのものの選び方や全体像から整理したい場合は「副業とは何か」も入口として使えます。

リスクを抑えて始めるための選択肢

就業規則の確認が済んだ後の話として、「どこから始めるか」も現実的な論点になります。ここでは制度面のリスクを下げる観点だけに絞ります。

まず、詐欺的な案件を避けることがリスク管理の前提

副業を始める段階で最も避けたいのは、就業規則との抵触よりも、金銭被害を伴う案件に当たってしまうことです。「初期費用を払えば稼げる」「誰でも自動で収入が入る」といった勧誘は、公的機関からも繰り返し注意喚起が出ている類型です。判断基準と相談先は「AI副業の詐欺の見分け方|公的機関の注意喚起と相談先」にまとめています。

契約関係と業務内容が明確な案件を選ぶ

就業規則との関係を整理しやすいのは、契約書があり、業務内容と稼働時間が事前に定義されている案件です。届出や許可申請の際にも、ガイドラインが挙げる「事業内容」「業務内容」「労働時間通算の対象か」という確認事項にそのまま答えられます。逆に実態が不明瞭な案件は、社内で説明するときに説明しづらくなります。本業のスキルを活かす方向なら、競業避止義務との関係だけは届出・相談の段階で共有しておくのが安全です。

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よくある質問

就業規則に副業禁止と書いてあります。副業をしたら法律違反になりますか?

民間企業の就業規則は法律ではないため、違反したことが直ちに法律違反になるわけではありません。ただし就業規則は労働契約の内容として効力を持ち、懲戒事由と結びついている場合があります。規定の有効性や処分の可否は個別の事実関係によって判断される領域なので、まずは条項の内容を確認し、必要なら労働問題を扱う専門家に相談してください。

厚生労働省が「原則容認」と言っているなら、会社の禁止規定は無効ですか?

そうは言えません。ガイドラインは行政が示す指針であり、企業に容認を義務づける法令ではありません。「裁判例を踏まえれば、原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当である」というのは企業に対する検討の要請であって、それに反する就業規則が自動的に無効になるという意味ではないと理解する必要があります。

会社が副業を制限できるのはどんな場合ですか?

厚生労働省のガイドラインは、裁判例上、制限が許されるのは①労務提供上の支障がある場合、②業務上の秘密が漏洩する場合、③競業により自社の利益が害される場合、④自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合、と解されているとしています。モデル就業規則第70条第2項も同趣旨の4号を置いています。

副業が会社にバレたら必ず懲戒処分になりますか?

一律には言えません。ガイドラインは、許可手続への違反を懲戒事由としている場合でも、形式的に就業規則に抵触したにすぎず職場秩序に影響せず労務提供に支障を生ぜしめない程度・態様のものについて、裁判例は禁止違反に当たらないとして懲戒処分を認めていない、と記載しています。そのうえで、懲戒処分を行うかは実質的な要素を考慮して慎重に判断することが考えられるとしています。

公務員でも副業はできますか?

国家公務員法第103条・第104条、地方公務員法第38条は、営利企業の役員兼職や自ら営利企業を営むこと、報酬を得て事業・事務に従事することについて、承認または任命権者の許可を要すると定めています。全面禁止ではなく承認・許可を要する構造ですが、運用は所属先や自治体ごとに異なります。所属先の人事担当部署と適用される規則を確認してください。

本業と同じ業種で副業をするのは避けるべきですか?

ガイドラインは競業避止義務について「使用者の正当な利益を不当に侵害してはならないことを内容とする義務」とし、正当な利益が侵害されない場合には同一の業種・職種であっても副業・兼業を認めるべき場合も考えられる、としています。ただし判断するのは勤務先なので、届出や相談の段階で業務内容を具体的に共有しておくのが実務的です。

業務委託やフリーランスなら就業規則の「副業」に当たりませんか?

当たらないとは言えません。モデル就業規則の解説は、副業・兼業には他の会社等に雇用される形のほか「事業主となって行うものや、請負・委託・準委任契約により行うもの」も含まれることに留意が必要だとしています。労働基準法の労働時間通算の対象にならないことと、就業規則上の届出が不要であることは別の問題です。

副業の許可を申請したら人事評価で不利になりませんか?

ガイドラインには「副業・兼業に係る相談、自己申告等を行ったことにより不利益な取扱いをすることはできない」と明記されています。実際の運用は会社により差がありますが、許可制・届出制が定められているなら、申請して記録を残すほうが後から発覚する形より説明できる状態を保てます。

まとめ

要点を整理します。

  • 民間企業の「副業禁止」は法律による禁止ではなく、就業規則という社内ルールの問題。労働基準法などに労働者の副業を禁じる条文はない
  • 公務員は例外で、国家公務員法第103条・第104条、地方公務員法第38条に承認・許可を要する旨の規定がある
  • 厚生労働省のガイドライン(令和4年7月改定)は「裁判例を踏まえれば、原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当である」としたうえで、制限が許されるとされる4類型を示している
  • モデル就業規則(令和7年12月)第70条は、勤務時間外の他社業務従事を認めたうえで、届出に基づき4類型に該当する場合に禁止・制限できるという構造
  • バレたときの処分は就業規則の定めと個別事情による。ガイドラインは形式的な抵触だけでなく実質的な要素を考慮して慎重に判断することを示している

「違法かどうか」は、外から一律に答えを出せる問いではありません。答えは自分の就業規則と、始めようとしている副業の実態の中にあります。一次情報で全体像をつかんだら、次は手元の就業規則を開くところからです。

※本記事は2026年9月24日時点で公開されている厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」「モデル就業規則(令和7年12月)」およびe-Gov法令検索に掲載された条文に基づいて執筆しています。法令・指針は改正される場合があります。本記事は法律上の助言を提供するものではなく、就業規則の解釈、処分の有効性、個別の紛争への対応については、勤務先の人事部門、労働基準監督署、労働問題を扱う弁護士、社会保険労務士などにご確認ください。税務上の取扱いについては税理士にご相談ください。

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